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開業事例

医師

親族医院継承のメリット・デメリット

開業日:H21年6月
開業年齢:38歳
標榜科目:内科・泌尿器科
開業形態:戸建て

 私の場合、医院継承とは言っても特殊なケースだと思います。ゆくゆくは父の後を継ぐ予定でいたのですが、父が急に他界し、それからすぐに医局の退職手続きを取って引き継ぐ準備を始めました。父が他界したのが2008年の10月、私が引き継いだのが2009年6月ですから登録的には父が一旦閉院、私が改めて新規開業ということになっています。
 父の医院を継ぐにあたっては医院の増築(診察室や待合室の拡張)を行いました。それにあたり診療圏調査をある業者に依頼したのですが、出てきた結果がまるで現実離れした数字。その後の対応にも疑問があり、その後の開業準備は別の業者にお願いしました。開業は安い買い物ではない、付き合う業者についてはしっかりと見極めたいと思っていました。そしてそこで私がポイントと考えるのは、もちろん会社としてのネームバリューも重要です、しかし担当者とのフィーリング、そして誠意が最重要だと思っています。もちろん業者にとっては「開業させてしまえば"勝ち"」なわけでリスクがない。言い方は悪いですが開業しようとしている医師は業者にとって"いいカモ"ですよね。我々にとって開業は大きなリスクを伴うものです。最終的に選んだ担当者は、一般的に言われる患者を引き継げる、といったメリットだけでなく、父の医院を継ぐデメリットも享受してくれた、これが大きなポイントでした。信頼できる業者(担当者)できれば、あとは信じて任せることができる。開院するにあたっての宣伝広告も一任しました。
 医院継承、特に親族継承では、短期間であっても親子が揃って診療し徐々に引き継いでいくというケースが大半だと思うのですが、私の場合は前述の通り8カ月もの期間を空けての開業でした。父の時代の患者を引き継げるというのは紛れもない大きなメリットです。実際それも大きく起因し、開業前の予想よりも開業当初の患者数は多かった。しかしデメリットもあることも認識すべきです。私の場合、まずは父と専門とする科目が違った。父は内科や外科、小児科もやっておりましたが、私は泌尿器が専門で総合的に内科も診ているといった状況です。ですから小児の診療については多くの経験がないため責任を持って診ることができませんので標榜はしていません。そういったことを勘案し開業する際の標榜科目も迷いましたし、父の時代の患者さんについては一定の説明が必要になります。また、私個人と父とのそもそもの診療方針や、医学の進歩によるガイドラインの変化に伴う診療内容の変更についても毎回説明をしなければなりません。父の診療内容をすべて否定するわけにもいきませんが、医学の発展もあり私にも行いたい医療がある、これは少しストレスになりましたね。
 そして開業するにあたって非常に重要なのが、知人の診療所の実際を多く見学に行くことだと思います。病院での勤務医と開業医ではそのスタイルも建物の構造も全く違います。近隣の、ましてや同じ標榜科目の医院へ見学となると決していい顔をされないと思いますが、地区が異なりさえすれば先輩の先生方は意外に気軽に見学に応じてくれます。それらを実際の目で確かめ現実を見ることができたことで、増築や医療機器導入などの際に非常に参考になりました。これは各業者が企画している開業セミナーなどでは絶対に得ることのできない貴重な財産です。
 スタッフは父の医院の閉院から8カ月を経過しておりましたので引き継いでいません。募集については様々手法で行いましたが新聞の折り込みが一番でした。60名もの応募があり実際は40名の面接を行い現在に至ります。スタッフはすべてパートで受付に6名、看護師を3名雇っています。日常的には受付に2名、看護師1名、私の5名で回しています。やはり正職員のように医院のすべてを知っているという柱の存在の必要性も感じますが、パート雇用の場合、ある程度自由度がある。そして人数を多く確保することによって不測の事態(急な欠勤など)にも対応することができます。開業に向けての宣伝はポスティングを中心に実施しました。泌尿器科という性質上、なかなか地元の医療機関には通いづらい。ですからこれには一定お金をかけて広くチラシ配布を行いました。
 開業するにあたり、ポイントは業者の選定、そして来院患者数は少なく見積もった前提で設備資金の融資を受けること、運転資金の準備をすべきだと思います。少なくても診療圏調査の数字は鵜呑みにすべきではない、例えその時点で出された数字が正しかったとしても、将来的に隣や向かいに同じ標榜科の医院が建たないとも限らないわけですから。

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