医師
勤務医から開業医へ 当初の予定はあくまで“予定”
開業日:平成20年10月
開業年齢:40歳
標榜科目:小児科
開業形態:クリニックモール
私は勤務先で付合いのあった機械メーカーに開業支援を依頼して開業しました。コンサルタント料は支払っていません。機械はお世話になったこともあり、そのメーカーのものを入れました。
私の場合、開業場所の選定基準は、子供の面倒を親に見てもらうため実家の近くであることが第一条件でした。また、資金面ではこの地域で一戸建て開業は難しいと判断し、ビル開業となれば集患の面などクリニックモールが一番よいと思ったことから、現在の場所に決めました。開業の時期は、インフルエンザの予防接種が始まる時期にし、まずは医院の存在を知ってもうことを主眼にしました。
開業までを振り返って思うことは、開業直前まで勤務していたのは失敗だったと思います。開業半年くらい前には勤務先に開業の意向を伝えましたが、人事異動の時期での退職を勤務先は譲らず、実質的に開業の1ヶ月前まで働いていました。忙しさに追われ、忘れていたことの一つに医師会への挨拶がありました。開業場所の近くに同じ科がありましたが、今は診療圏内に同じ科があるのは当然で、むしろ今の場所の診療圏内には小児科が少ない方だと思いました。開業支援をしてくれたメーカーもそう言っていたので特に問題はないと思っていました。内装が終った段階で挨拶に行ったのですが、競合する医院が既にあることから、「今からでも可能であれば開業を是非止めて欲しい。医師会としては入会を認めるが、早めに前もって相談して欲しかった」と言われました。メーカーは医師会に関しては何も教えてくれません。医師会から挨拶に行ったほうがいい先生を教えていただき、一軒一軒お詫びも兼ねて挨拶に回りました。
開業に至るまでには、騙されたとか挨拶にいかなかったからどうだったとか、様々な情報が入ってきます。その情報を取捨選択して精神面を鍛え、経営者になるんだという強い意識を持たなければなりません。コンサルタントを使うなら、全てお任せにはしない方がいいですが、信じて全てを一任したのであれば、「騙されてもしょうがない」と腹をくくるくらいの気構えが、経営者としては必要だと思います。開業のほうが儲かるとか楽だとは思いません。どんな状況に陥っても私にはこれしかないという確固たる信念がないと途中で挫折してしまうと思います。
開業してよかったと思うことは、患者さんに「女性の先生は安心できていいですね」と言われることです。出産後勤務医として働いていた時は女性は何でこんなに損なんだろうと悔しい思いばかりでしたが、ここに来て初めてその気持ちが晴れました。子供を育てながら医師を続けるためにも開業しましたが、開業してからは当初の思惑と異なることが多くなります。初めは漠然と、自分が経営者になれば「時間」は自由に使えると考えていました。しかし経営を考えると、それほどの自由はないのです。予定通りに行かないことが多々あることは覚悟しておきましょう。