医師
自治体の起業支援融資には注意を~開業に際し、注意すべき点
開業日:平成18年4月
開業年齢:47歳
標榜科目:泌尿器科
開業を考えたのは、勤務先の病院が平成18年3月末で閉院することが決まりましたので、その1年前から考え始め、前年の11月に決定しました。抱えている患者さんのこともあり勤務していた病院の近隣での開業を決意しました。開業を決めてからは知人に相談し、内装業者を紹介してもらい準備を始めました。
開業場所は、病院に近い駅前周辺で地元の不動産に相談しながら決めました。私の開業は、医局の先輩開業医の協力がなければ不可能でした。コンサルタントや卸業者にも依頼せず、日経ヘルスケア出版の開業マニュアル本を購入し、資金計画、事業計画など自分で作成しました。診療圏調査も、市役所で公表されている資料で、年齢別の人口分布がわかり、年齢によりどれだけ泌尿器科にかかるかの推計できます。また、各科の診療単価が厚労省から出ていますので自分で十分に調べることができます。但し、気をつけなければならないのは、泌尿器科に関しては、透析患者のデータも含んでいるので、他の科目と比較して平均単価が実際の単価よりも非常に高くなっているため、それに惑わされないことが大切です。それらを基に保険点数を調べ一人当たりの点数を計算し、資金計画・事業計画書を作成しました。
開業過程では、診療所名と融資でのトラブルがありました。保健所に開設届けを出し問題なく受理され、電柱広告、駅前広告、看板を依頼し、作業に入る直前になって、所属する地方公共団体の役人の裁量権なのか、電話で「クリニック名が医療法23条の広告規制に抵触する」と連絡があり驚きました。地域によっては“腎”という表示は使ってはならないこともあるようですので注意すべきです。当然、社会保険事務局にも事情を説明し届出の修正手続きを行いました。
また、自己資金の他、川崎市の起業向け融資を利用しようとしましたが、こちらも問題でした。手続きも無事に完了したところで直前になって、「3月31日まで勤務し、4月1日からオープンというのは融資条件に合わない」ということで白紙に戻されてしまったのです。事業計画書も作成し面談で了承されましたが、最後の最後になって白紙に。先輩に聞いて国民金融公庫(現 日本政策金融公庫)があると聞いて何とか融資を受けることができました。
設計・施行関連では、例えば業務用エアコンはインターネットで購入すると15万円、定価は56万円、と購入方法によっても値段に大きな差が出ます。時間を作り、資材などの価格は業者の言い値ではなく適正な価格なのか、また値引き交渉をする上でも自分で調べることが大切です。
私は自分で手を尽くし開業をしましたが、コンサルタントに依頼すれば勤務で忙しい中、開業準備の手間は省けると思います。どちらを選択するかは先生次第です。