歯科医師
身内雇用は業務範囲に明確な線引きを “活きる”患者目線の妻の指摘
開業年齢:38歳
標榜科目:歯科
開業形態:ビルテナント
開業は10年ほど前から視野にあったのですが、自分が納得できる場所で開業したかった。郊外で患者と密着し長く付き合い、家族単位で治療したいと望んでいましたので、神奈川県だけでなく関東近県も含めて探していました。開業した物件は、土地勘があった地域で妻が見つけてきたのですが、60坪と、自分のイメージよりは多少広かったのですが賃料が安かったことが決め手となりました。また郊外型の開業では1階というのが最低条件でした。
開業するに当たっては診療圏調査を業者が実施し、それほど多くない患者数が出されました。ただ勤務医期間が長かったということもあり市場調査の手法などは勉強していましたので、業者は大した情報を持っていない、所詮“机上の空論”だということは分かっていました。それよりも自分で足を運び、その街の昼と夜の顔を見る、そのことの方がどれだけ重要か。業者はそこである程度の数字を出してそこから開業に向けて利益を上げていくというスタイルだということも認識していましたので。
自分の納得できる開業を迎えるために、勤務医時代に養われた“目”は重要でした。様々な業者を見て、いくつかの開業セミナーに参加しましたので、内覧会は業者に依頼すると80~100万円位はしてしまうが分かっていたため自分で実施。また競合する医療機関が近隣にないのであれば、一定期間歯科医院にかかっていない潜在的な患者がいる。便がいいことで足を運んでくれるようになった層が開業直後は非常に多かったように思います。宣伝についてもなるべく自分で、と近隣のスーパーなどにチラシを置かせてもらいに回ったり、高齢者のケアハウスなどに飛び込み営業などをしたりもしましたね。さすがに新聞に折り込んでもらうための万単位のチラシを、複数の営業所に自分で持ち込んだことは後悔しましたけどね、本当に疲れました(笑)。やはり明確な戦略を持って開業する、そしてそれを楽しまないとなかなか今の時代難しいと思います。
スタッフには妻が衛生士として従事しています。身内が同じ医療機関で働くことのデメリットも耳にしますが、明確な線引きを行うことができれば、これ以上ない強力な味方になります。診療は私、そのほかのマネージメントは妻。妻はスタッフ同士のコミュニケーションの中心となり、患者の目線で応対などについては鋭い指摘をしてくれます。長く勤務医を経験しているとどうしても専門家目線になってしまう。また経営者になった途端に雇われていた頃の気持ちを忘れてしまう、そこを妻がいい意味で崩してくれるのです。スタッフも雇われている側ですので気づいた点があってもなかなか院長には申し出にくい、その役割を妻が担ってくれていることは非常にありがたいことです。ただ患者には配慮して妻には旧姓で働いてもらっています。「院長の妻」という肩書きがつくと患者も物が言いにくくなりますし、こちらとしても患者の本音を聞くことができなくなってしまう。開業してからも妻が多くのマネージメントを担ってくれているおかげで診療に専念できるという点で妻の存在は大きいです。まあストレスも多いですけどね(笑)。
駅周辺の開業よりも郊外型の開業は特徴として、口コミの効果は絶大だと感じています。住民の結び付きが非常に強いですからマイナスに出た場合の恐怖心は常に抱えています。口コミによる患者同士の繋がりなども分析していますが、今のところはそれが良い循環として集患に繋がっています。