歯科医師
前勤務先近隣での開業は十分な根回しを
開業年齢：41歳
標榜科目：歯科
開業形態：ビルテナント
私が開業したのは、前勤務先から徒歩５分にあるビルテナントです。当初業者に依頼して県内・県外問わず開業地を探しましたがなかなか見つからず、結局業者の助けを借りず自分の足で探した結果、最終的には前勤務先の近くにある現在のビルに落ち着きました。
決め手になったのは地の利です。ただ前勤務先との関係も考え本当に悩みました。新規開業時にどれだけ患者さんが来るか予測できず、その不安を正直に前勤務先の理事長に話して何度も交渉し、これまで診ていた患者さんの一部が新規開業するクリニックに移っていただけることとなりました。そのおかげで開業直後は比較的順調な滑り出しだったと言えます。この他にも、前勤務先に１２年勤務したので地域の事情を熟知していること、駅前の好立地なので患者さんが来院しやすいこと、前勤務先は駅を挟み反対側にあるため診療圏と患者層が異なるので影響は少なかったことなども大きかったです。
しかし、結果的には前勤務先への根回しが不十分だったのです。開業後、前勤務先の別の責任者から患者さんの引き抜きだとクレームが来て、それ以降前勤務先とは疎遠になってしまいました。理事長や院長などの責任者だけでなく、他部署の責任者にもできる限り近隣に開業する旨を説明すべきだったと反省しています。
また、私が開業する話を聞いた前勤務先のスタッフのうち、歯科衛生士と歯科助手の計３名が一緒に働きたいと申し出てくれました。これまでの実績があるので業務上連携がとりやすいと考え、前勤務先の理事長の許可を得て開業と同時に移ってもらいました。また、現在は歯科医師である妻も一緒に診療しているので、自分に万一の事があった場合でも当面診療を続けることができます。本当に頼もしい存在です。
開業準備では、設計を依頼した業者が歯科医院の工事経験が少ない事がトラブルを招きました。自分も忙しくて余裕がなく業者任せにしてしまったことも大きな原因です。例えばこちらが指摘するまでシンクに石膏トラップがついていない事に気づかない、受付カウンターの高さが低すぎて使い勝手が悪いと指摘しても再調整しないなど、こちらの要望どおりいかない事が多くストレスになりました。業者選びの際はある程度実績を重視する必要があると思います。
今後の課題はスタッフの労務管理です。開業時は優秀なスタッフを確保するため、給与を比較的高めに設定しました。しかし患者数はまだ目標の８割で今後の収支予測もつかず、万一スタッフの給与を見直す事態が来た場合の事を考えると本当に頭が痛い。顧問税理士と相談していますが、開業後の経営状況を想定し、仮に収益が予想より低くても耐えられる給与水準にする必要があったのかもしれません。
