歯科医師
診療圏調査の見方 周囲の医療機関数と"競合医療機関数"はイコールではない
開業年齢:44歳
標榜科目:歯科
開業形態:ビルテナント
開業相談は知り合いを通じて不動産関係の業者に依頼しました。医療機関の建築も多く携わっているということ、医療に特化した部署を持っているということで安心して開業準備を始めました。料金は内装工事費用に包括して支払ったため、具体的な金額は承知していませんが、社会通念上「安くはないな」というのが印象でしょうか。しかし、歯科医という閉ざされた世界の中で、建築業者や融資関係、広告宣伝業者も含めてその人脈は皆無と言っていいほどです。そしてそのノウハウも皆無。そういった面で言えば、依頼した業者に仲介役として付き合いのある様々な業者を紹介いただいたり、見積もりを取ったりしてくれたことを考えれば、決して無駄ではなかったと思っています。開業を踏み切るにあたり一人では何もできない、信頼できるパートナー(アドバイザー)が見つからない限りは開業するべきではないと思っています。
診療圏調査は役に立たない、という話をよく耳にします。出てくる数字だけ見て判断するのであればそう言えるかもしれません。しかし、周囲の競合となるであろう医療機関の実情をそこで把握することで、その数字が全く意味が変わってくるのです。開業場所の周囲には確かに多くの歯科医院が存在しました。そして数字自体もそれほど多く出てこなかった。しかし周囲の医療機関では、例えばもう高齢の先生が多く、診療日が少ない医院があったり、診療時間が短い医院があったり。そうなれば事実上の競争相手は果たしてどれほどになるのだろう、将来性を考えそこで開業する意味も見えてくると思うのです。
開業には"運"も必要なのだなと思います。もちろん開業場所については角である1階のテナント、商店街近くの人通りの多いところなど、存在自体が広告宣伝となるように考慮し決定したわけですが、幸運なことに私の医院の裏にあるスーパーマーケットが地域住民の方々の生活において欠かせない存在になっており、毎日大いに賑わっています。そして、そのスーパーに行くためには必ず私の医院の前を通らなければならない。それが地元住民にとって大きな宣伝効果を生んでいるのです。開業準備段階では、もちろんそこまでは気付かなかった。そういった意味では幸運でしたね。
私はビルテナントで開業しているわけですが、内装をいくら綺麗にしてもビル自体の建築年数や耐性については注意が必要かと思います。もちろん賃貸は古い部件ほど安い。しかし古いビルは建物自体に"落とし穴"があるケースも気をつけなければなりません。実は開業してから、医院内部の至る所にカビが発生したのです。原因は地下排水管の漏れ。もちろん工事業者のミスと言うことも考えられますが、ビル自体の問題も否めません。もちろん無料で修理していただきました。また、壁には少しヒビが入り始めてしまっている状況です。
スタッフの募集は雑誌などで行いました。先入観として歯科衛生士は不足していると思っていたので、実は最初に面接にいらした方で採用を決めてしまったのです。そうしたら、その後応募が殺到。結果的には採用した衛生士さんは良く働いてくれましたので問題はなかったのですが、立地や待遇などによっては不足と言われる衛生士も応募が多い、それは頭の片隅に入れておいた方がいいかも知れません。
現在スタッフは衛生士・事務員を正職員で、非常勤として歯科医師と助手を雇用しています。実は事務員は私の妻。他の医療機関の状況を聞くと、親族がスタッフに入っていると他のスタッフが気を使ってしまう、やりづらい、などの話は聞いておりました。しかし経費節減のためには妻に入ってもらわざるを得ない。そこで妻は旧姓で働いてもらい、スタッフには夫婦だということを内緒にしているんです。他のスタッフは薄々気付いているとは思うのですが、今のところ人間関係は良好です。また、仕事とプライベートは分けた方がいい、妻はスタッフとすべきではないなんて言う話も聞きますが、現在はストレスを感じることなく仕事とプライベートを楽しんでいます。
歯科医院は飽和状態と言われています。しかし、開業場所選び、そして来院される患者さんに満足できる医療を提供できる腕があれば何も臆することはないと思っています。